夏休み、子供の頃、せみの声、もっとゆっくり木を観察してたよね。どんな街の中にある木であったとしても。あの頃もっと太陽と友達だったよね。汗も一杯かいてたっけ。大人になると自然から離れてしまうもんだね。
わずかな夏休み、この季節は日頃忙しいからか子供たちに遊ぼうとせがまれる。この暑い中、全力で走りまわると汗びっしょり。「ちょっとタイム、タイム。休憩、ちょっと休ませて」「エーまた休憩」とガッカリする子供達。
もちろんこうやって子供の世界に誘ってもらえる時期はあと何年もないと分かっているから、君達に応えたいのだけれど、君らと付き合うと、体力の限界、いや年齢の差を見せつけられる。こんな単調な遊びなのにどうしてあきないでいられるだろう。ただ追っかけ追っかけられるだけなのに……
子供と遊ぶのは、そんじょそこらのエアロビクス、シェープアップ運動よりもいい運動になるのは確実! そうそう これは運動不足解消、解消とプラス思考で考えるのだけれど、何度も繰り返される単調さには「ギ、ギ、ギブアップ」と何度も叫びたくなる。
いたずら好きな目がまた、こちらを挑発する。いかにもまた、追いかけてくれるのをその瞳は待っている。顔全体で遊ぶことの楽しさをこちらに教えてくれる。この笑顔は大人には真似できないよな……。
下の娘もそんな小さな身体であっちに行ったり、こっちに行ったり、その間も、飛び跳ねたり、何かをまたいだり、そして走りながらもずっと笑っている。顔一杯で。天使の笑顔だ。
長男の大好きな従兄が遊びに来たので、一緒に食事に出掛ける。まったくといっていいほど、我が子は落ちつきがない。食べながらも身体がリズミカルにゆれて、踊っている。
一つ上の従兄との食事が“楽しいー!!”と身体が物語っている。「子供は素直だなぁ」と思う。楽しくて、楽しくて、しょうがない彼。「パパと一緒に遊んでも、この笑顔は出ないよなぁ」と思う。やっぱり大人の義理の遊びは、子供同士の楽しさには勝てない。声も数オクターブ上がって、いつになくハイテンションなのです。「空悟(長男の名前)、少し落ちつけ」と注意してもじっとしているのは最初の数分間だけ。観てるとわかる。彼の内から楽しくてしょうがない波動がリズムとなって内から込み上げてくるのが「ドンドコ、ドンドコ、ドンドコ……」この楽しさのリズムが子供の自然な感情なのだ。人の目、常識の目など、どこ吹く風!!
子供を見ながら、昔飼っていた犬を思い出した。まるで自然の中で走りまわる子犬のように、いたずらな目が好奇心を満足させる対象をいつもさがしている。だから子供と動物は本当に自然に近い。楽しい時には楽しさを全身で表している。悲しい時にはボロボロと大粒の涙を流す。心が何の障害物もなく身体に表現される。これだから「子供はノイローゼにならない」と思った。幼い子供がノイローゼにならないのは自然な感情表現を押さえ込まないからだろう。
大人のカウンセリングをしていると、普通であることを一生懸命に演じる。楽しくてもはしゃぐのは、はしたないし。悲しくても、泣かないで、平静に保つことが立派な大人の条件なのだ。自然に日常に起こる感情をいつも平静に保つことが大人になるための処世術。紳士、淑女になる条件は、自然な内なる感情を外に発散させないこと。 良い大人は素直な感情の波を押さえ込むことのようだ。だから大人がノイローゼになるのもしょうがない。
だから私達大人は子供がうらやましくなる。
子供のように自分達も、突然に脈絡なく走りだして、楽しい時に 頭、手足、身体全体でおもいっきり表現したらどんなに幸せなことだろうと。悲しい時には人前だろうが、大粒の涙を一杯流してみたらどんなに気持ちが晴れるだろうと。きっとそれは自然な現象だったのだ。だから、大人のふりをすることは自然から離れることにつながる。
いつも子供のような心を持ちたい。この夏の光のシャワーをそして、その輝きを発見できるような。そんな楽しい一日を持つことが心の治療につながる。
話をもとにもどして、レストラン。
食後のデザート。円形に盛り上がったシャーベットの上にスプーンで縦、横に格子模様をつけて「ねえ、パパ、メロンパンみたい」と笑っている。周囲に気をつかって、「フン」と鼻で笑いながら。心の中では「そんなおまえが大好きだ!!」と叫んでいる。
どんな成績をとってくることも、他人の目を気にしてしっかり挨拶できるのもきっと素敵なことなんだろうけど、だけど、でもやっぱり「そんなおまえが最高だね」とそう思う。
でもねパパはね、社会の目を超えられないんだ。「食べ物で遊ぶな。空悟!」と言ってしまう。
大人になると心と言動がケンカするものだね。これが大人の悪い病気なのです。いつかおまえのように心から素直になる一日を持ちたいね。笑って、泣いて、心と行動をしっかり重ね合わせてね。
「子供から学ぶ」それが大人の夏休みの宿題なんだろう?
なぁ、空悟。おーい聞いてる? 全然眼中にない…… やっぱりあんたは自然だね……。
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