緊急指令:天に宝を蓄えよ | ひとりごと | 心理カウンセラー 衛藤信之 | 日本メンタルヘルス協会

えとうのひとりごと


■緊急指令:天に宝を蓄えよ
1999年7月20日
 講演会の時には、話しながらも舞台の上から、なつかしい顔を見つけることができる。
なつかしい瞳と目で挨拶を交わす瞬間。「先生がんばれ!」「うん、頑張るからね」と無言のエールに応えるつもりで話す内容にも力が入る。
 講演中も知っている人のことは気になるのです。「お元気でしたか?」「隣の人は友達ですか?」「今日は一人ですか?」「今日はご夫婦で来てくださったのですね」なつかしい顔、優しいまなざし、ステキな笑顔。
 講演を終えてからが大急ぎ。舞台の進行係にお礼を言って、足早に楽屋にもどり主催者側に挨拶をする。そして急いで会場のロビーへ向かう。なつかしい顔に会いたいから。「お元気でしたか」「お久しぶりです」まるで気分は同窓会。一番楽しい瞬間。

 ただし問題なのは講演後に本の販売がある時です。サインしている時には余裕がなくて、来てくれた人に、きっちりお礼の挨拶が出来ないことがあるのです。その時は本当にごめんなさいって感じです。
 サインの機会は何度もあるのに、サインをすることは今でも全然なれません。はっきり言って、まったく余裕がないのです。笑顔で対応するだけで精一杯で、サインしながら軽快なおしゃべりなど至難のわざ。ムリしておしゃべりをしようものなら、「どこから来られたのですか」「○○町です」地方講演だから、そんな地名を聞いたところで、それが何処なのか知るはずがない。「○○町ですか。そこは遠いのですか?」「いいえ、隣り町です」「あ、そうですか。ハハハ……」という感じのことは日常茶飯事なのです。

 でも、人はやさしいですね。そんなあわただしい中でも、そんな慌てふためいている様子を見て、優しい言葉をかけてくれるのだから。「先生、ムリをしないで下さいね」とか「先生はいつも一生懸命だから、お身体のことが心配です」と優しい言葉をかけてくれる。「ありがとうございます」と応えながら、「それを言うのは私の方なのに」と思います。
 それを言われる価値があるのは、「あなた」の方なのですよと。なぜなら私は好きでカウンセラーになったのです。好きな仕事をしているのですから。そんな優しい言葉は僕には似合わないのです。なぜなら、どれほどの人が好きな仕事に就けるのでしょう。幸せな私にはとてもとても勿体ない言葉なのです。
 だけど、嬉しかったです。とても暖かい気持ちになったから。
 だからこそ、それはまるごと優しい声をかけてくれた「あなた」が言われるべき言葉なのだと思うのです。なぜなら、「この講演に来るために無理をしませんでしたか?」「恐い上司にイヤミ一つ言われなかったですか」「子供を親にゆだねてくるのに気を使わなかったですか」そして、「この講座参加費は、もしかして誰かが、あなたにムリな仕事を押し付けて、得たものではないですか」そしてそれは、「あなたの汗や涙を流して得た大切な代価なのではないのですか」。だからこそ私たち講師は一生懸命になってしますんです。「来て良かった」と思ってもらいたいから。明日からの「あなた」のエネルギーになれたらと。
 
 日本メンタルヘルス協会には「怒りのベルマーク理論」というのがあります。
ベルマークを知っていますか。子供の時いくつも切り取って、学校の廊下にあるBoxへ。それがたまると「机」や「ブランコ」になる。ありがたいマークなのです。
 ところが、我が協会のベルマークはちょっと違うのです。聖書の中に「天に宝を蓄えよ、朽ちることも盗まれることもない宝を」と書いてあったと思いますが、これは私の勝手な解釈なのですが、誰が一番、天ではリッチなのか。それは今一番苦労していながらそれでも笑って頑張っている人です。仏教ではこの世は修行道場なのだそうです。そんな苦しい修行の中でくさらないで生きている人です。修行中に笑えるなんて「すばらしい人物」か「変人」(これは冗談)です。
 
 ようするに「現世」で楽しい思いばかりすると「あの世」の宝を今、使いはたしているのです。だから好きな仕事に就いてしまった、わが身としては、「天国の宝を今消耗しているのかもしれぬ、という危機感があるのです」なぜなら、好きで仕事をしている。これだけでも、私は神様からすると、「きっと怒っているんだろうな」と思っているのです。
 
 では、どんな人が神様は好きなのかというと。仕事ならコピーをして、クレームの電話をとって、掃除をしている人です。我が協会のスタッフにもいます。それでも誰からも賞賛されることのない人。いつもいっぱい苦しんで、汗をかいて、涙を我慢して、人前で笑っている人なのです。この人は、きっと見えなくても天に一杯一杯宝を蓄えているんですんね。

 今日も誰かのために頑張りましたか。ほら、聞こえるでしょ「チャリン!」という天の貯金箱の中に貯金が増える音が。
 
 だからこそ好きな仕事に就いているということは、これだけでも神様が怒りのベルマークを貼るわけです。 恐いのは、これが満点に近づくと病気、事故、最悪の場合は死なのです。(もちろんこれは想像の世界ですが)でも、恐い、怖いベルマークなのです。
 だから「先生、身体に気をつけて」という優しい言葉は、好きな仕事で生きている私には、神様から怒りのベルマークものなのです。
 
 でもね、怒りのベルマークを唯一はがしていただく方法があるのです。
 それは精一杯に笑って、頑張ってカウンセリングして、一生懸命に講座をするということなのです。ですから舞台に立つ時、講座の教室に入る時、カウンセリングルに入る時には、私はいつも神様に祈っているのです。今から精一杯頑張りますから、怒りのベルマークが減りますようにと。だから手を抜くことはできないのです。

 現代人のさびしいのは、生活の中で神との対話をしなくなったからだと思うのです。それは何かの宗教を皆さんに勧めているわけではありません。自分の中で生かされているという感謝の気持ちをもつことではないかと思うのです。
 
 今あなたが部下や子供に偉そうにして怒って感情を爆発させると、怒りのベルマークが加算されますよ。叱られた相手は天では、あなたの上に君臨する、天のリッチマンで、あなたの上に来る人かもしれません。現世では目下のその人に、天では助けられるのかもしれません。だから、今飛び出しかけた怒りをぐっと飲み込んでみませんか。
 もう、怒鳴ってしまった、あなた。怒りのベルマークがほら3枚も。何時間たってもいいから、何日たってもいいから言いすぎたことを謝りませんか。もしかしたら、神様が怒りのベルマークをハガシてくれるかもしれないから。

  今日も苦しみに耐えている「あなた」へ。天の上でまたチャリンと音が響きましたよ。
 あなたは目に見えないリッチマンなのです。

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